2025/11/15 21:22

新作「hi」(=杯)は、紅輪として初めて“ゴブレットの姿”へ静かに目配せした器です。
高台の高さや、ふくらみからすっと立ち上がる腰のライン。どこか洋の香りを漂わせながらも、手に取るとやはり日本の器のスケール感に落ち着く——その境界の曖昧さをあえて残したかたちです。
色名の MUGE(むげ) は「融通無碍」から取った言葉。
ひとつの用途に縛られず、使う人の呼吸にあわせて自在に振る舞う器でありたい、という思いを込めました。
MUGEの釉調は、白の中にかすかに霧の粒子が漂うような表情です。
上部はマットに、下部は光沢がわずかににじむ。
この“定めすぎない白”こそが、融通無碍というテーマと響き合う部分で、どんな空間にも溶け込みながら、ほんの小さな存在感だけを残します。
「hi」は、ゴブレットでも湯呑でもない。
そのあいだにある、余白の器です。
決めつけない形、固定しない色。
その曖昧さに、使い手自身が自由に意味を見つけていく——
そんな器を、今回の「hi | MUGE」でつくりたかったのだと思います。