2023/03/24 23:35
最小の力量で最大限の効果。
サックス、ギター、ドラムというジャズの中でもやや変則的な楽器編成で、スケールの大きな景色を描いているのが『TRIO GRANDE』(2020年)。
ウィル・ヴィンソン(Will Vinson)はイギリス出身のサックス/キーボード奏者。NYコンテンポラリー・ジャズ・シーンを牽引しています。
ギタリスト、ギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)はイスラエル出身。ジャズの革新が語られる際にまずその名が上がる人です。
ドラマー、アントニオ・サンチェス(Antonio Sanchez)は、映画『バードマン』での冒険的な音楽担当でその名を知っている人がいるかもしれません。
3人はNYマンハッタンの伝説的カフェ、コーネリア・ストリート・カフェ(2019年に閉店)で初共演を果たします。そこで生まれた想像以上の化学反応に導かれるように今作が生まれたそうです。
三者が絡むアンサンブル・アレンジがスリリングに緻密です。だからこそ、アドリブでのプレイに圧倒的な開放感を感じさせられます。
ジャケットに映る正三角形に思いをはせてください。それらを繋ぐ線という線は何なのか。
一人の楽器がメインで演奏されている後ろで、誰か一人の遊び心を加えたフレーズが聴こえてくるとき、目の前の景色がパッパッと変化します。
目を疑いたくなる作品です。
耳をすませば。